東京高等裁判所 昭和42年(く)50号 決定
被告人 大貫新三
〔抄 録〕
本件即時抗告の要旨は、申立人は、東京地方裁判所が申立人に対する詐欺被告事件につき、昭和四一年三月四日言い渡した判決中の理由の論旨及び文言が明確でなく、主文の刑に量定された事実の範囲等を確認し難いから、刑事訴訟法第五〇一条に基づき、その解釈を求めたところ、東京地方裁判所は、同条にいう「裁判の解釈について疑いのあるとき」とは、裁判主文の趣旨が明瞭でなく、その解釈について疑いがある場合を指すのであつて、その主文に対応する理由の論旨や文言、あるいは刑の量定の事由等について疑義ある場合まで同条によつてその解釈を求めることは許されていないものというべきであるから、右申立は不適法として棄却すべきものであるとし、申立人の右申立を棄却したのであるが、申立人の右裁判の解釈の申立は、単に理由の一部に対するものではなく、主文のよつて生ずる理由が明瞭でなく、従つて主文の趣旨も明瞭でないので、主文の刑によつて生ずる理由を明らかにすることにより主文の趣旨を知りたいと思い、刑事訴訟法第五〇一条により申立をしたのであり、同条は裁判を受けた者に主文の趣旨を理解せしめるためにある、申立人は本件詐欺被告事件につき、前記東京地方裁判所の判決において偽造に関係したとして主文の刑を言い渡されたのであるが、偽造の事実は、訴因外の事実であり、かつ、確証がなく単なる疑いに過ぎないのに、右判決は、請求の名目をもつて罪となるべき事実として判示、認定し、詐欺の刑に裁判上の情状加重をして刑の量定を行つたものである、申立人は、右判決が訴因外の偽造の犯罪事実に言及、判示、認定している違法、不当を明らかにするため、右申立に及んだのに、これを棄却した原決定は不当であるから、原決定を取り消し、更に裁判を求めるため、本件即時抗告に及んだというにある。
よつて案ずるに、刑事訴訟法第五〇一条にいう「裁判の解釈について疑があるとき」とは、裁判の主文の趣旨について疑いがあることをいい、裁判の理由についての疑いがある場合を含まないと解すべきところ、申立人の申立の趣旨は、主文の刑のよつて生ずる理由を明確にするにあり、申立の対象となつた詐欺被告事件についての東京地方裁判所の昭和四一年三月四日の判決が量刑事由として訴因外の偽造の事実を単なる疑いに過ぎないのに情状に関する事実として判示、認定して刑を加重していることを明らかにしたいというのであつて、単に裁判の理由に関するものに過ぎず、裁判の主文に関するものということはできないから、同条によつて裁判の解釈を求め得る場合にあたらないことが明らかである。それ故、原決定が右申立を棄却したのは正当であり、本件即時抗告の申立は理由がない。
(松本 真野 石渡)